秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 乗るかどうかは行ってみてから考えようと、三人はロンドンアイに向かった。志弦の言ったとおり、観覧車のガラス面は想像以上に大きかったが、碧乃はちっともひるむことなく興味を示した。
「じゃあ乗ってみようか」
「はい」

 ゆっくりと回る観覧車からはロンドンの街が一望できる。碧乃は窓にかじりついて、大きな瞳を輝かせている。
「楽しいか、碧乃」
 碧乃はこくこくとうなずく。
「まー、まーま」
 ニコニコ笑顔で碧乃に呼びかけられたが、清香は窓の外を直視できない。

「うぅ、外が見えすぎて結構怖いです」
 高所恐怖症というほどではないが、そんなに得意ではないことを今さら思い出す。科身体をこわばらせていると、志弦が優しく手をにぎってくれた。
「大丈夫。怖いなら外でなく俺を見ておけばいい」
「は、はい」
 青墨で描いたような瞳、すっと通った鼻筋、色っぽい唇。
(あいかわらず、極上に美しいなぁ)
 もう新婚と呼ばれる時期は過ぎたというのに、彼の顔を見つめているといまだにドキドキして呼吸が止まりそうになる。

「志弦さんが素敵すぎて、これはこれで心臓に悪いです」
「それは光栄だな」
 不敵な笑みも憎らしいほどにかっこよくて、胸が甘く疼く。

 観覧車をおりたあとは、ロンドン塔やビッグベンなどの主要な観光スポットを周る。イギリスならではの、フィッシュアンドチップスなどのグルメも楽しんだ。
< 172 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop