秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「美術館巡りを始めると君は興味をなくしてしまうだろうから、婚約指輪を先に探そう」
 志弦の提案で午後は宝飾店巡りをすることにした。美術館ツアーは明日からだ。
 大粒のダイヤやルビーなどがズラリと並ぶショーケースは圧巻だ。

「日本ではダイヤが人気だけど、ヨーロッパでは色鮮やかな石も人気があるらしい。清香はどれが好みだ?」
「えっと、どれも綺麗ですけど、やっぱりダイヤモンドかな。子どもの頃から憧れていたので」
「そうか。俺も清香にはダイヤが似合うと思う。あまり大きすぎる石は使い勝手が悪いだろうから……二カラットくらいかな?」
「いやいや、二カラットは十分に大きすぎる石の範疇だと思いますよ」
 こういう場面では、志弦がとんでもないセレブであることを再認識させられてしまう。

 ふと、婚約指輪の隣に並ぶ小さなリングに清香は目を留める。地金はゴールドで中央に小さな宝石が埋まっている。
「どうした?」
「これ、ベビーリングでしょうか」
「あぁ、そうだろうな。最近は日本でも流行っているみたいだけど、もともとヨーロッパの風習だったはずだ。――ロンドン旅行の思い出に碧乃にプレゼントしようか?」
「いいんですか?」
「もちろん」
 碧乃がジュエリーに興味を持つ年頃になったら、ネックレスとしてプレゼントしたら喜ぶのではないだろうか。その日を想像するだけでワクワクする。
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