秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
後ろ姿なので断言はできない。一番奥まった席に座っている彼に、ゆっくりと近づいていく。
すると、まるで気配を察したかのように彼が振り返った。
思わず「あっ」と息をのむ。
涼やかな目元に高く通った鼻筋、形のいい薄い唇。モデルのように完璧な頭身バランス。醸し出す雰囲気は穏やかで知的で、どこかミステリアスだ。
目の前の光景が信じられなくて、パチパチと何度も目を瞬いてしまった。
(まさか……嘘でしょう?)
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。動揺に……かすかな期待が交じる。
『最高の夜を約束するよ』
艶めいた彼の笑みが、ありありと思い出される。
優しい腕に抱き締められた夢のような時間、あれからまだひと月も経ってはいない。
(こんなことがありえるの? お見合い相手の、大河内家の御曹司の正体が彼だなんて)
彼のほうも清香がこの場に現れたことに驚いたのだろう。瞠目して、こちらを注視している。先に動いたのは、彼のほうだった。
席を立ち、清香のもとへ歩み寄る。
「清香さんですか? 榛名画廊の」
間違いない、顔も声も、たしかに彼だ。清香は混乱のままに、こくりとうなずく。
「あなたが……」
緊張と興奮で声が震える。
「大河内昴さん?」
あの夜は互いに名乗らなかった。そういうルールにしたのだ。だから、とんでもない偶然とはいえ、彼が大河内昴であっても不思議はない。
すると、まるで気配を察したかのように彼が振り返った。
思わず「あっ」と息をのむ。
涼やかな目元に高く通った鼻筋、形のいい薄い唇。モデルのように完璧な頭身バランス。醸し出す雰囲気は穏やかで知的で、どこかミステリアスだ。
目の前の光景が信じられなくて、パチパチと何度も目を瞬いてしまった。
(まさか……嘘でしょう?)
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。動揺に……かすかな期待が交じる。
『最高の夜を約束するよ』
艶めいた彼の笑みが、ありありと思い出される。
優しい腕に抱き締められた夢のような時間、あれからまだひと月も経ってはいない。
(こんなことがありえるの? お見合い相手の、大河内家の御曹司の正体が彼だなんて)
彼のほうも清香がこの場に現れたことに驚いたのだろう。瞠目して、こちらを注視している。先に動いたのは、彼のほうだった。
席を立ち、清香のもとへ歩み寄る。
「清香さんですか? 榛名画廊の」
間違いない、顔も声も、たしかに彼だ。清香は混乱のままに、こくりとうなずく。
「あなたが……」
緊張と興奮で声が震える。
「大河内昴さん?」
あの夜は互いに名乗らなかった。そういうルールにしたのだ。だから、とんでもない偶然とはいえ、彼が大河内昴であっても不思議はない。