秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
五章 もう一度、抱き締めて
 清香の持つチョコレートクリームがたっぷりとのったココアを見て、茉莉は「うわぁ」と眉をひそめる。
「見てるこっちまで胸焼けしそう」
「いいの。甘いものは私の幸せの源だから」
 茉莉はいつもどおりブラックコーヒーだ。

 仕事帰りの午後七時、某チェーンのコーヒーショップで茉莉と落ち合った。ウタの様子が気になるので、一緒に夕食ではなくお茶だけにしてもらったのだ。
 清香の座る椅子の下の荷物置きには、仕事用のトートバッグのほかにウタのために購入してきたキャットフードやトイレシートなどの入った大きな紙袋がある。
 
 カップに口をつけながら茉莉が言う。
「それにしても、久しぶりだよね~」
「うん、二週間以上会えてなかったかな?」
 社会人の友人同士ならそんなものだろうが、同じマンションで姉妹のように暮らしていたふたりには〝久しぶり〟なのだ。
 会うのはマンションを出て以来だった。清香は花嫁修業で忙しかったし、茉莉は茉莉で取材のため、一週間ほど広島に行っていたらしい。
「はい、お土産」
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