華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
京は部屋に戻ってきてすぐにつばきが食事をとったことを確認する。
全て食べ終えているのを見ると、安堵したように笑った。
つばきは頭を下げてお礼を言った。もう死にたいと、死なせてほしいと願っているのにこうやって食べ物を与えられて涙を流すほどに幸せを感じる自分に矛盾を感じながら。

「手首と足首を見せてみろ」
「…あ、はい」

部屋の中心で立ち尽くすつばきにそう言った。つばきは先ほどまで寝ていた布団の上に移動した。
今夜はこの部屋でこの布団で眠るのだろうか。
突然不安が押し寄せた。“夜伽”の意味を知らないわけではないからだ。
急におろおろと黒目を宙に移動して、動揺している様子を見て京がふっと笑う。
膝を折って正座したつばきの正面に胡坐をかいて座ると、つばきの手首を掴み目線をやる。
赤黒くなったそこは長い間縛られていたせいだろう。
同じようにして足を崩すように言われたつばきは、足首を見せた。
そこも同じように赤黒く変色していた。

「相当ひどい生活をしていたようだな」
「…」

京はつばきの足首を撫でる。別に痛みなどはない。いや、感じない。
これくらいならば幾らでも我慢が出来た。
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