華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
♢♢♢

「あの…だから、その、」
「あぁ、そういうことですか。今夜が初仕事だからそんなに緊張しているのね」

厨房で明日の朝食の仕込みをするみこにもじもじと両手を合わせながら耳打ちすると、彼女は「はぁ…」と息を吐いて一旦手を止めた。
既に女中たちの姿はなく、皆離れに戻ったようだ。
みこが一人でいるところを見つけすかさず話しかけたのはいいものの、上手く言葉にすることは出来ずにいた。

「もうそろそろお時間では?京様も最近は仕事で忙しいので、早めに就寝したいと思いますよ」
「そ、それはわかっております。私のような立場で相談するのもおこがましいのですが…」
「相談と言われましても、わたくしが助言できることはありませんよ。そもそも京様は女性を自宅に招いたことはございません」
「え?!そうなのですか…?」

思わず声を張り上げるつばきはすぐに自分の両手で口を塞いだ。
みこも辺りを伺うように視線を巡らせ、小声で続けた。

「ええ、本当です。“遊び”はそれなりに派手ではございますが、それは“外”で済ませておりましたので。特定のお付き合いをされている女性もおりませんでしたよ。多分、ですけどね」
「…そう、ですか」
「京様が何を求めているかはわかりませんが、そのままのつばきさんを見せたらいいのではないでしょうか。だってあなた初めてでしょう?」
「分かりますか…?初めてだって」
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