華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
ええ、もちろんと言ったみこは、さっと手を洗い、離れに戻ってしまった。
一時間前に初めて湯船に浸かり、体を綺麗にした。
(本来であれば、私も離れで暮らすのが普通よね。それなのに…どうして京様は本館に私を住まわせるのだろう)
新しい浴衣に着替えたつばきは、一階の廊下を行ったり来たりして京の部屋に入ることが出来ずにいた。
(ダメよ、仕事なのだから…しっかりして!)
意を決してつばきは京のいる寝室のドアへ手を掛けた。
京とはあのキスの後から会っていない。仕事があったようで先ほど帰宅したらしい。軽く夕食を済ませた京は風呂に入った後すぐに寝室へ向かったと聞いた。
あのキスも仕事の一つだ。何の意味はない。
それなのにたった一度の触れるだけのキスを何度も脳内で再生していた。
買われた身でありながら、おかしな感情を抱えている自分に辟易する。
何度も深呼吸をしたのち、つばきはようやくドアをノックした。
どうぞ、という声が聞こえゆっくりとドアを開けた。