華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
ベッドの中に体を沈める。
京も同じようにしてつばきの隣に体を預けた。
異性と同じベッドで眠るなど経験はない。キスだって初めてだったのだから当然だ。

「聞きたいことがある」
「…はい」
静まり返る寝室で、京が正面を向いた状態で言った。
「呪われた緋色の目の話だ」
「っ…」
「その目の件も側近に調べさせた。お前の生い立ちについてもそれなりには調べたがあまり情報が上がってこない。西園寺家が絡んでいるからだとは思うがそれが本当ならば緋色の目の件も本当になる。だが…―」

つばきは京が何を言いたいのか理解できなかった。それなりに自分のことを調べていることは知っていた。だが、自分の何を知りたいのか分からない。
生い立ちもそれなりに知ることが出来れば十分なはずだ。たかが夜伽なのだから、別にどうだっていいはずだ。

「俺はお前の瞳が呪われているというのは嘘だと思っている」

思わず小さな声を上げていた。動揺を表に出さなぬよう、「どうしてそう思うのでしょうか」と訊く。しかし語尾が震えていた。

「こっちを向け」
「…はい」

つばきはゆっくりと体を彼の方へ向けた。至近距離で同じ布団の中にいる。
心臓が早鐘を打つ。
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