華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「…っ…ぅ、ふ…ん」
足の先までとろけるような甘い痺れを感じながら、彼に応えるように舌を絡ませた。
キスの仕方はこれで正解なのだろうか、京に不快な思いをさせていないだろうか、などと考えるが主導権は彼が握っていた。
呼吸が乱れ、苦しくなってくると京がようやくつばきから顔を離した。
どのように“夜伽”として彼に満足してもらえるのか分からないままでのキス。
涙で滲む瞳を彼に向けると、覗き込むようにつばきを見る。
息を切らしながら視線を絡めると腹部が熱くなっていく。
「悪い、やり過ぎた」
「いえ、…そのようには感じておりません」

すると、京は小さく息を吐いて「そういういい方は困る」と言った。
意味が分からずに、キョトンとしているとようやく京がつばきから離れる。
全身から京の重みが消えていく。
ほんの少し寂しさを感じながら既にここから逃げようという気持ちが消えていることに複雑な心境を抱えたまま灯りが消えていく。

京のおやすみという言葉に「おやすみなさい」と返す。
まるで、恋人同士のような会話に心拍数が上昇した。そのうちつばきは眠っていた。

―翌朝
起きると既に京の姿はなかった。
まだ6時だというのに、もう仕事へ行ったのだろうかと思うと体が心配になった。
京の寝室から出ると、顔を洗い身なりを整え、食堂に向かった。
みこがいるかと思ったがそこには雪がいた。
「あぁ!」とまるで親しい友人を発見したかのように目を輝かせつばきに近づいてきた。



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