華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「つばきちゃんって呼ぼうかな~」
「いいですよ。じゃあ私も雪ちゃん雪ちゃんって呼ぶね」
「嬉しい~!」

他愛のない会話をしながら、ゆっくりと歩いた。
雪と友達のような距離感で接することが少し恥ずかしさもあるが嬉しかった。

「京様って弟がいるんですよ」
「そうなんですか?」
「そうですよ!顔は似ているんですけど、何ていうのかな。性格は真逆って感じです。たまーにですけど京様のお家に遊びに来ますよ」
へぇ、と相槌を打つ。
京に弟がいることは初耳だった。

「雪ちゃんは?兄弟いるの?」
「あ…いました、っていうのが正しいですかねぇ。姉がいました。数年前に亡くなっているんですけど…事故で」
「そうなんだ…ごめんね、変なこと聞いて」
「いえいえ、それよりも~この近くに可愛い髪飾りが売ってるんですよ!この間お給料が入ったばかりなので買っちゃおうかなって。つばきちゃんの分も一緒に買おうよ」
「いいよ!ダメだよ。自分の為に使って!大切なお金なんだから」

雪は明るい性格だが、姉を亡くしているということに胸が痛んだ。
それに加えて髪飾りを買ってくれるなどというのだ。何ていい子なんだろうと思っていると、突然体が強張る。

「どうかした?つばきちゃん」
「あ、…ううん、何でもない」

視界の端に清菜を捉えた。ちょうどすれ違う形で視界に捉えたのだ。清菜は気が付いていないようだった。
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