華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
女中の恰好をしていたからか、それともこんなところにつばきがいるわけがないと思っているからなのかわからないが彼女は付き人と一緒に買い物に来ているようだったが気が付いていない。
確かにここから西園寺家はそう遠くはない。
清菜は一条京に買われたということは知っているのだろうか。それとも、まだ知らないのだろうか。
不安に駆られながら、雪には心配を掛けられないと無理に口角を上げた。

しばらくして、雪の“用事”を済ませた後、近くの店に入った。
ここからは私用になるのだが、これくらいはいいだろう。
キラキラと目を輝かせながら髪飾りを選ぶ雪。
どれがいいかな?と悩む彼女と一緒になって髪飾りを選んだ。どれもそれなりに値段のするものだった。
数十分ほど買い物を楽しんだ後、つばきと雪はお喋りをしながら屋敷に向かっていた。

「あれ?雪さん?」
と、背後から誰かに呼びかけられる。

振り返るとそこには男性が立っていた。着物姿の眼鏡をかけた男性は優し気な雰囲気を醸し出し、雪とつばきに目をやる。
つばきは会釈して初めましてと軽く挨拶をした。
整った顔立ちはつい京を連想していた。

「あぁ!お久しぶりです!あ、紹介しますね。こちらのべっぴんさんはつばきさんって言います。最近京様の屋敷に住み込みで働いています」
「そうなのですね。初めまして、僕は中院翔(なかのいん しょう)と言います。京君とは幼馴染なんですよ」
「初めまして。つばきと申します。最近京様のところでお世話になっております」
「そうなんだ。京君によろしくね。僕はこの近くに住んでいるんだ」
「そうなんですよ~たまーに中院さんも京様のお屋敷に遊びに来ますもんね」
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