華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「今戻りました~」

先に屋敷に入った雪の声が聞こえる。

中院翔とはその後すぐに別れ屋敷に戻った。
綺麗な簪を貰って嬉しさもあるが、こんな高価なものを使っていいものなのか悩む。
(まぁ、既に貰った簪を使っているのだけれど…)
こっそりと外出したことは誰にもバレていない、そう思っていたのに黄色地に鞠が散りばめられた着物に着替えてから厨房に向かう際、みこさんと廊下でばったりあう。

「少しは気分転換になりましたか?」
「っ…あ、えっと…!も、申し訳ございません」
どういうわけかみこにはバレていたようだ。
「別に構いませんよ、外出くらい」
「え?!どういうことですか?許可されているのでしょうか…」
「今朝、京様から外出の許可を頂いておりました。聞いていなかったのですか?」
はい、と答えると「あの人もそういうの人任せね」とため息混じりに息を吐く。
(でも…外出許可が出ているということは逃げる心配はないと思っているのかしら…)
疑問符が脳内で散りばめられる。

「大丈夫ですよ、好きに外出しても。ただし、夜はダメです。一人での外出は許可されておりません。それは女中たちも同じです」
「わかりました。あの、何か手伝いをしたいのですが。例えば…二階の掃除とか」
「…そうですね、それは京様から許可を取っていないので。今日はお部屋でゆっくりしてください。京様は早めに帰られると思いますよ」

みこにそう言われ、つばきは自分の部屋に戻ることにした。
京には自分から女中たちの仕事を手伝わせてもらえるように話そうと思った。
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