華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
京は不服そうな顔をしていたが、みこから呼ばれ部屋を出ていった。
去り際、明日の夜また部屋に来るようにと言われた。

京がいなくなるとふっと肩の力を抜く。
(簪のこと…どうしようかしら…)
咄嗟についた嘘にモヤモヤしながら一階へとおりていく。
雪を発見してすぐに駆け寄った。廊下を水拭きしている最中だった。

「雪ちゃん、ごめんなさい!ちょっといいかな」
「どうしました~?あれ?簪してないの?」
「そのことなんだけど、」

つばきは京についてしまった嘘を雪に伝えた。雪は終始キョトンとした顔をしていた。

「つまり、中院翔さんから頂いたことは内緒ということだね!」
「そう、ごめんね!どうして嘘ついちゃったのか自分でもわからないんだけど…」
「確かに…高価なものですもんねぇ。私が買ったってことにしておきましょう!ていうか…つばきちゃんって、」

うん?と返すと雪はうふふと笑って辺りを見渡す。
そして、こそっと耳打ちした。

「京様のこと好きでしょ?」
「っ…え?!な、なにを急に、」
「大丈夫だよ~誰にも言わないし。それに京様に素敵な人が出来ればいいなぁってずっと思ってたの」

―好き

そのような感情を持ち合わせたことなど一度もない。考えたこともない。
だが、雪は当然のようにつばきにそう言った。
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