華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
顔を真っ赤にしながら否定するが、それは逆効果だった。
雪は目を細め、にんまりと口元に弧を描く。
つばきは一歩、後ずさり小さく首を横に振る。

「認めた方が楽になりますって。ね?」
「そ、そんな失礼な感情っ、持ってはいけない」
「失礼だなんて~素敵な感情だよ」

雪は続けた。まるで教師と教え子のように。

「いいですか?恋心っていうのは、どうしようもないものなんですよ。恋焦がれる気持ちはどうしようもないんです!それにあんなに素敵な人、好きにならない方が変ですって。次のお仕事はいつなの?頑張ってね!つばきちゃん!」
「……」

雪は忙しいようで他の女中に呼ばれ「はぁい」と大きな声で返事をすると奥へ消えていく。
つばき自身はまだ認めたくはなかった。だが、確かにこれが恋だとすれば…最近の複雑な胸中の説明がつく。
「どうしよう…」
誰もいない廊下でそう呟いた。

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