華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
それなりに歩いていたからか、足が疲れてきた。そんなつばきを心配してか、京は屋敷へ戻ろうと提案してくれた。
結局、つばきには高価すぎるほどの商品を抱え、屋敷へ戻った。
女中たちはすぐにつばきたちの関係について噂話をしているようだった。

「だってねぇ。あの京様がねぇ」
「そうよね、見た?指輪」
「もちろんよ。つい最近来たばかりの子でしょう?」

存在を消して聞き耳を立てると聞こえぬよう溜息を溢す。
確かに不自然だとは思いながらも、彼の強引さに負けていただいてしまった。
自分の指に光る綺麗な指輪を見ると心が騒がしくなる。
同時にぎゅっと締め付けられるような痛みを感じる。
これは…―。
「私は京様を、」
愛してしまったのかもしれないと、いや、愛してしまったのだと悟る。
初めての感覚でありながらも、はっきりと自覚するほどにその感情は膨れ上がる。
どうしようもない、どうしようもない感情だ。
雪に見破られるほどもしかすると自分はわかりやすいのかもしれない。本来持ってはならない感情だ。
自分の胸の中にそれを押し込める。

買ってもらった簪やリボンは大切に自室にしまった。十分ではないか、命を救ってくれただけではなく、買われたというのに…ここまでしてくれるのだ。それに感謝し、自分の仕事をする。それだけだ。
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