華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「せっかくだからちょっと話そうよ。この間の簪は使ってくれた?」
「…あ、あの…」
と、背後から声がした。
「中院様、どうされましたか」
「みこさん、久しぶりだね。ちょうど京君に会いに来たんだけど」

ようやく頬から離れた手、そして振り返るとみこがいた。
みこは「京様は夕方ごろお戻りになります」と端的に答える。
みこさん、と呼ぶ翔はそれなりにここへ通っているようだ。

「うん、今はいないんだよね。でもせっかくだしちょっとゆっくりさせてくれないかな?つばきさんとも少し話がしたいし」
「…それは、」
「ダメかな?」
「…承知しました」

渋々了承するみこは「どうぞ」と翔たちを客間へ通す。翔の要望でつばきも一緒に通された。客間は完全な和室だ。
襖で二部屋に仕切られている。ちょうど庭園が見える。

「どうして私まで…」

客間へ通されてすぐにつばきは疑問をぶつけた。先ほどの涙を見られていたことは恥ずかしさがあるがそれよりもどうして自分などに構うのかと思っていた。
「泣いていたこととこれが関係あるのかなって」
「っ」
翔は懐から二つに折られた紙を取り出した。それはつばきが先ほど拾ったものと同じものだった。
口を半開きにして数秒無言になった。
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