華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「何故…それを、」
「屋敷近くに落ちてあったんだ。というか今日は風が強いから飛ばされてきたのかもしれない。この紙に名前が書かれてあったから気になったんだ。つばきって聞いたことあるなぁって思って。この間会ったあの子かなって。悪戯かもしれないなぁとは思ったんだけど君が泣いているのを見て本当なのかな、と」
「……どう、して」

軽い口調で話す翔につばきはどうして?と言葉に出していた。
もしもそれが真実だと思っているのならば、どうしてこの人は自分の目を見て笑っていられるのだろうと。
いつの間にか立ち尽くすつばきの目の間に立ち、まるで小さな子供を見守るような目で見据える。

「本当なんだ?誰だろうね、こんなものばら撒く何て」
「…どうして、私の目を見られるのですか。どうして…」
「緋色に光ると呪われるの?でもそうだったら今光ってないしなぁ」

困惑していた。
死ぬかもしれないのに真っ直ぐにつばきを見る。不思議で仕方がなかった。
翔は、京と同じだと思った。つばきを腫れ物扱いすることはしない。利用しようとも思っていない。

「大丈夫?」
「はい、大丈夫ですが…」
「つばきさん、以前に会った時よりも凄く顔色がいいね。あ、…その指輪って」
つばきの手元に目をやる翔。



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