華に浪漫~夜伽のはずですが溺愛されています~
「これは京様から頂きました」
「そうなんだ。珍しいなぁ、京君が誰かにプレゼントか…」
何かを考えるような素振りを見せ、翔はつばきの手を掴んだ。
「えっ…―」
「へぇ、これは…かなり高級な指輪だね」

指輪を見るためとはいえ、手に触れられビクッと体を揺らす。
いつの間にか緋色の瞳の話題から指輪の話題へと変わっていた。

「京君は君に夢中なのかな」

大きくかぶりを振った。何を言うのかと思った。そんなわけないじゃないかと思いながらも翔が冗談で言っていることはわかっていた。そこまで真剣に否定しなくともいいのだ。

「はは、君は凄く…何というか、可愛いね。反応が」
「っ…」
「京君が夢中になるのもわかる気がするなぁ」
そう笑う翔に戸惑いながら瞬きを繰り返す。
からかわれているのだとわかっていても、慣れない言葉や仕草に戸惑う。
「お願いがございます」
「うん?」
「あの紙の件は秘密にしていただけませんか、京様には…」
「あぁ、君について書かれてあったことを?それともこの紙がばら撒かれてあったことを?」


ばら撒かれてあったことです、と伏し目がちに言った。
「京様は既に緋色の目については知っております。これがばら撒かれていたことを知られると…迷惑がかかります。おそらく私へ恨みを持っている者がしたことだと思いますので京様に何か被害が及ぶ可能性はゼロだと思います」
「いいよ、わかった。でも女中たちはもう知ってるんでしょ?口止めするのって大変だと思うんだけど…」
「…それは、」



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