次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。


「ん〜美味しいですね! 肉味噌、美味しいです。このとろろも卵も最高ですっ」

「本当に美味しいですね。この味噌って、イマガワさんの味噌ですよね?」


 唐突にそんなことを聞かれて頷く。


「すごいですね」

 すごいのは、私の実家でお父さんたちだ。私はメニュー表に書いてあったから頷いただけ。


「恥ずかしいんですけど、私、メニュー表で初めて知って。家業のことなのに、何も知らなかったんだなと今反省してます」

「恥ずかしいことは何一つないと思うけど、知らなくて当然なんじゃないかな。君はビジネスとは関わること、なかったでしょう? 俺も大学卒業した時は何も知らなかったし」

「そう、なんですか……?」

「うん。手伝いとかしたことなかったし、ただ『銀行の御曹司』っていう肩書きがあっただけ」


 そうなんだ。なんだか、意外だ。

 更科さんは全てにおいて完璧で、大学生とかから手伝いとかしてると勝手に思ってた。


「まぁ、堅苦しい話は置いといて食べよっか。せっかくの料理が冷めちゃうよ」

「はい。改めていただきます」


 そう小さく呟いて手を合わせたのに彼に聞こえていたようで「いただきます」と更科さんも手を合わせて食べ始めた。

 ご飯を食べた後は、デザートを頼む。二人ともチーズケーキで飲み物は更科さんがコーヒーで私が紅茶を注文した。

 デザートを食べながら談笑をする。この前は緊張しすぎて何も話せなかったけど、今日はなぜか話すことができた。彼が年上だからだろうか、それともお仕事で色々な人と会い交渉とかしているからだろうか心を開かせるのがうまいと思う。



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