次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。
「和紗ちゃんお願い聞いてほしいんだけど、いいかな?」
「は、はい。なんでしょうか?」
「俺のことは、『佑』と呼んでくれないかな。更科だと他人ぽいだろう? これから夫婦になるのに」
「ぇ、……あの、た佑さんは私と、本当に結婚してくださるんですか」
夫婦と言われて驚いて、オドオドしながら問いかけてしまう。
「俺は和紗ちゃんと結婚したいって、思ってるよ。和紗ちゃんは嫌、かな」
「そうじゃないです。佑さんは、とても素敵なので私なんかがいいのかなって……」
「俺は、和紗ちゃんがいいんだよ。これ以上はちゃんとした場所で、言わせて」
「……っはい」
私は顔が熱くなるのがわかってチーズケーキの最後の一口を口に入れて紅茶を飲んだ。照れた顔を誤魔化すにはこうするしかなかった。