次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。
「……まぁ、今日も頑張りなさい」
お父さんはそれだけ言うと「じゃあ今日もよろしくお願いします」とだけ言って奥へと言ってしまった。
私、今川和紗はこの味噌屋の長女。春に大学卒業して今は家業手伝いとして働いている二十四歳。
小さい頃から出入りしているからか皆、私のことを知っていて“なっちゃん”と呼ばれている。
「なっちゃん、旦那様には隠し事はだめだよ。すーぐわかっちゃうから」
「あははそうだよね」
笑いながら確かに、と思って並べていると「なっちゃん」と呼ばれて振り向く。
「圭くん」
「甘酒買いにきた」
「いつもありがとう」
圭くんこと、三田圭一はお母さんに実家であるレストランの料理人をしている。二十九歳で、幼い頃から顔馴染みの幼馴染のような存在。
お兄ちゃんって感じで優しくてだいすきな人。