次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。
そもそも俺は独身を貫くつもりだった。だが、親父が『孫が出来るまでは頭取は譲らん!』と言い出したためお見合いをすることになった。
まさかそれが、二十も歳下の女性とするなんて思わんかったが。
部屋に帰るとすぐチャイムが鳴った。モニターに映るのはカメラに向かって手を振り「たす〜! 開けて!」と言っている男。鍵を開ければすぐに入ってきた。
「おっじゃましまーす! たす、コーヒー淹れてよ〜」
「いきなりやってきて、図々しい奴だな」
俺はため息を吐きながらも電気ケトルに水を入れお湯を沸かしはじめる。マグカップを出すとインスタントコーヒーをマグカップに一杯ずつ入れてお湯を注ぐとアイツがいるとこに持って行った。
「はい、遥。どーぞ」
「どうも〜」
こいつは里見遥。女のような名前だが男だ。同い年で幼馴染で幼稚園から大学まで一緒、就職先も同じという腐れ縁でもある。