次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。


 ***


 朝起きると、とても気持ちよさそうに眠っている佑さんが隣に寝ていた。私は起き上がり、不意に昨日のことが思い出される。


「……き、すをしちゃったんだよね……」


 思い出しただけで唇が熱く感じて指で唇に触れる。


「……熱い」


 私は彼から離れようとベッドを降りるとスマホを探した。スマホの電源を入れて電話帳の【お母さん】というページをタップし、電話のマークを押した。

 今の時間は六時だしきっといるはず。


『――なっちゃん?』

「うん、おはよう。お母さん……あの、外泊しちゃってごめんなさい」

『そんなこといいのよ? だって昨日、更科さんから丁寧な連絡いただいたし。夕翔さんにも、連絡してくださって』

「お父さんにも……?」

『えぇ。何を話したのかわからないんだけどね、更科さんなら安心だって言ってたわよ』

「そ、なんだ」

『そうよ〜まぁ、気をつけて帰ってきてね。更科さんによろしくね』


 私は頷くと電話を切った。電話を切って彼の方に目を向けるともう起きていて「電話してたの?」と問いかけられる。

< 38 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop