次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。



「体調はどうだい?」

「……おかげさまで、熱も下がりましたのでもう大丈夫です」


 お父さんはさっきまでお母さんが座っていた場所に座ると「婚約の件だが」と切り出した。


「婚約を白紙にしてほしいとこちらから願い出たところ、和紗と話し合ってもいないのに白紙は受け入れることができないと言われたんだ」

「確かに……そうですよね」

「あぁ。一度、会ってもらえないか?」

「……わかりました。私、会います」


 それはそうだ……話しをしないまま、婚約白紙したいだなんて「はい、そうですか」と言えるはずない。私でも話しをしたいって言うだろう。



「分かった、先方にはそう伝えよう――入ってくれ、更科くん」


 ……え!?まさか、今いるってこと?
 私は混乱していると、部屋に入って来たのは佑さんだって。


「会うことをお許しいただきありがとうございます。……そして、突然の訪問申し訳ありません」

 佑さんは、いつものような仕事用のスーツは着ていなくてカジュアルな感じもあるラフなスーツを着てそこにいた。



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