次期頭取は箱入り令嬢が可愛くて仕方ない。
「お待たせして申し訳ありません」
すると私たちが入ってきた同じ入り口から三十代くらいのいかにもモテそうな男性と白髪混じりのダンディーな男性が入ってきた。
「いいえ、更科さん……今日はありがとうございます」
「こちらこそ、遠いところまで来ていただいて有難うございます」
お父さんと更科さんは顔見知りらしく、お見合いなのに二人で話を始めてしまった。
「……今川なぎささん、で合ってますか」
「! あっはい。味噌屋イマガワの当主の娘で、今川和紗といいます」
突然聞かれてびっくりしながらも私は名前を言ってお辞儀をした。頭を上げると、無表情な彼がこちらを見ていてドキッとする。
私、なんか間違えた!?
「よかった、合ってた。和紗さん、可愛らしいなと思いまして。つい見ちゃいました……俺は、更科銀行の更科佑と申します。よろしく」
「は、はいっ! こちらこそよろしくお願いしますっ」
「あぁ。父たちは、ビジネスの話ばかりしてるので何か食べない?」
更科さんにそう言われて確かにお昼時だからかお腹が空いてきたかもしれない。