たとえこの世界から君が消えても
「ふっ、あはは!なんですかその変なくしゃみ」


「ううーだって寒いから…。ってちょっと、そんなに笑わないでよ」



珍しくつぼっている蓮くんの腕を軽く叩く。



「あ、昼休み終わるまで俺のブレザー来ててください」


「え、そんな、悪いよ」


「別に俺、寒いの平気なんで。陽菜先輩、ほっとくと風邪引きそうだし」


「じゃあ…ありがとう」



お言葉に甘え、蓮くんのブレザーに腕を通すと、ふわりと甘い柔軟剤の香りに包まれて、どきりとする。



それにさりげなく名前も呼んでくれたし…。


こんな気持ちになるなんて、やっぱり私、徐々に蓮くんに惹かれているんだ…。


最近読んだ小説の感想を言い合っていると、予鈴が鳴った。



「あ、もう昼休み終わりかあ。教室戻るけど、蓮くんも戻る?」


「いや、俺はもう少しだけ残ります。キリのいいとこまで読みたいし」



毎日蓮くんは昼休みが終わるギリギリまで図書室に残っているから、私が先に図書室を出る形となる。


私もギリギリまでいたいが、教室が少し遠いからそこまでの贅沢はできない。



「じゃあ、また明日ね」


「はい、また明日」



少し名残惜しいが、蓮くんと別れ図書室を後にする。
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