たとえこの世界から君が消えても
加奈たちに怯え生きてきた毎日が、やっと変わったのだ。


これも全部、蓮くんが背中を押してくれたおかげ。



「蓮くん!」



勢いよく扉を開けると、いつものように顔面に風が吹き付けてきて、反射的に目を瞑る。


目を開けると、これから私が何を言おうとしているのかわかっているかのように、優しく微笑み待っている蓮くんがいた。



「陽菜先輩、こんにちは」


「蓮くんが背中を押してくれたおかげで、私ちゃんと言えたよ。本当にありがとう!」


「俺じゃなくて、陽菜先輩が行動した結果ですよ。よかったです、嬉しそうで」



愛しいものを見つめるかのような眼差しに、どきりとする。



「あ、あのさ、一つお願いしてもいい…?」


「なんですか?」


「蓮くんに頭撫でられるの好きだから…撫でてほしいなって…」



恥ずかしいことを言っているのはわかっているが、頑張ったのだからこれくらいしてもらっても、きっとバチは当たらないだろう。
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