たとえこの世界から君が消えても
「…顔」


「え?」


「真っ赤」



頬に蓮くんの手が当てられる。


蓮くんの手は大きくてひんやりとしていて気持ちがいい。



「れ、蓮くんだって真っ赤だよ」


「これは…陽菜先輩のが移った」



しばらく優しく頬を撫でていた手が、ゆっくりと頭に移った。


優しく撫でてくれる蓮くんの手に、目を閉じながら集中する。



「…あの、こんな感じで大丈夫ですか?」



しばらくして、ゆっくりと離れていく手に少し名残惜しく感じながらも、目を開ける。



「うん、ありがとう」



蓮くんと目が合い、二人して笑みをこぼす。



蓮くんとの短い昼休みの時間が大好きだ。


蓮くんが…大好きだ。



気持ちを認めてしまえばあっという間だ。


気持ちを伝えることの大切さを知った今、この気持ちを伝えないという選択肢はない。


明日、ちゃんと蓮くんに私の想いを伝えよう。



…だが、その日が来ることはなかった。

六月の終わりと共に、蓮くんは、この世界から姿を消した。
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