たとえこの世界から君が消えても
「あ、陽菜もうそろ時間なんじゃないー?」


「本当だ。ごめん、ちょっと行ってくるね」



廊下に出る前に一瞬振り向くと、私の視線に気づいた加奈がにこやかに手を振ってくれた。



「…はああ」



詰めていた息を吐き出す。



昼休みまで三人の悪口を聞くのはさすがに耐えきれず、最近は図書委員を言い訳にして図書室に行くのが日課となっている。


図書委員の仕事が本当にある時ももちろんあるが、週一程度でほぼない。


誰にも邪魔されずに静かに過ごせる図書室は、私にとっての生きがいだ。


いつも通り図書室のドアを開けた時だった。



「…うわっ」



ぶわっと強い風が顔面に吹き付けてきて思わず目を瞑る。


乱れた髪を直しながら中に入り、開いていた真正面にある窓を閉める。



六月に入っても雨の日は多く、今日も朝から大雨が降っている。
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