たとえこの世界から君が消えても
慌てて笑顔を作るが、奏多はまだ心配そうな顔をしている。



「あ、そういえば今日、早めの夏祭りこの近くでやるんだって!放課後三人で行こうよ!」



話を変えようと、昨日見た夏祭りのチラシを思い出し、スマホを見せる。



「おーもうそんな時期かー」


「いいね、楽しそう!」



夏祭りの話で盛り上がっているうちに、さっきまでの違和感はもうすっかり消えていた。



「陽菜、ごめんー!今日美容院の予約してたのすっかり忘れてた!夏祭り、また今度でもいい…?」



放課後になり、帰る支度をしていると紫音が泣きそうになりながら謝ってきた。



「いいよ、全然!」


「え、まじかよ。屋台で何食うか決めてたのにー」


「え?なんで?二人で行けばいいじゃん」



首を傾げると、なぜか奏多が顔を赤くしながら頭を叩いてきた。



「ほんっと、おまえなんも考えてないよな!」


「まあまあ、奏多。今日がチャンスだと思って頑張れ。じゃ、私行くね、また明日ー」
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