たとえこの世界から君が消えても
「なにがチャンスだよ、あのやろう…」


「なんの話?」


「なんでもねーよ!俺らも行くぞ」



なぜか怒りながら奏多が教室を出て行ってしまい、慌てて後を追う。



「ねえ、奏多。なんで怒ってるの?」



ずっと無言で隣を歩く奏多の顔を覗き込む。



「別に、怒ってねーよ。ただおまえが鈍くてむかつくだけ」


「鈍い?私、鋭い方だよ?今日だって紫音が前髪二ミリ切ったの気づいたもん」


「そういう意味じゃねーよ!」


「じゃあどういう意味よ」


「おまえも言うようになったな…。坂本たちとつるんでた時はもっと大人しかったのに」


「過去のこと振り返らないでよ…。あんまり思い出したくない」



正直、過去にあまりいい思い出がないから、話したくない。


少し前までの私はいつも人の顔色を伺い、たとえ自分と正反対の意見を言っていたとしても、それに合わせることしかしてこなかった。
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