たとえこの世界から君が消えても
「遅いなあ奏多…」



スマホのメッセージにも既読がつかない。


もしかして、何かあったのかな…?


いてもたってもいられなくなり、人の波に飛び込み、押しつぶされながらも奏多を探す。



だが、どんなに探しても奏多はなかなか見つからない。


いつの間にか、全然人通りのないところまで来てしまい、戻ろうとした時だった。


どこからか、話し声が聞こえてきた。



「いい加減にしてください。こんなとこまで連れてきて…」



奏多の声だ、とすぐにわかり、声のする方に近づく。



「いいでしょー?お姉さんと遊んでよー。君の顔すっごくタイプなんだもんー」


「だから、友達待たせてるんです。いい加減手離してください」



そっと覗くと、二十代前半くらいの女の人が、奏多に腕を絡ませ言い寄っていた。



「お姉さんの方が楽しませられるよー。ねえーいいでしょー?」


「あ、あの!」



見ていられなくなり、慌てて奏多と女の人の間に割り込む。
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