たとえこの世界から君が消えても
「ん?なあに、この子?」


「陽菜、なんでここに…」



奏多の手を取り、無我夢中で走り出す。



「…うわっ!」



しばらく走り続け、小石につまずき転びそうになったが、奏多が支えてくれた。



「あぶね…大丈夫か?悪い、陽菜。あの人めっちゃ酒臭かったから酔っ払いだと思うんだけど、すごいしつこくて困ってたから、助かった」


「…なんで」


「え?」



どうしてこんなに苦しい気持ちになるのか、自分でもよくわからない。



「すごい心配したんだから!あの人にもいっぱい触られて…。奏多だって、あんなに綺麗な人に言い寄られて、満更でもなかったからはっきり断らなかったんでしょ!私なんかより、あの人と遊びに行けばいいじゃん!」



ハッと我に返り、口をおさえる。



私、何を言っているの…?


こんなのまるで…。



「…嫉妬?」


「なっ…!ち、違う…!」



両手で顔を隠し、奏多に背を向ける。
< 35 / 70 >

この作品をシェア

pagetop