たとえこの世界から君が消えても
「…あの」



窓の外を見ていたから、人がいたことに今気づいた。



驚いて振り向くと、サラサラの少し長い前髪から覗く瞳と目が合った。


あまりにも整っている顔立ちに不覚にもどきりとしてしまう。



「あ、えっと、なにか…?」



じっと見つめてくる視線に耐えきれずに、ぱっと顔を逸らして小さな声で尋ねる。



「…あんた、名前は?」


「え…?私?あ、鮎川(あゆかわ)陽菜…」



急になんだろう?



「…あーこれ。この本借りたくて」



男子生徒が、手にしていた小説らしきものを差し出してきた。



「あ、貸し出し…」



今日は私の担当日ではないが、一応図書委員だしやってしまっても問題はないだろう。



「一番後ろのページにある、貸し出しカードに名前を記入してください。そしたらこっちで読み込みをするので…」


「…ん、書いた」
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