たとえこの世界から君が消えても
あれ…?なんだろう、今、何かが引っかかったような…。



「奏多ってもう一人弟いたっけ…?」


「ん?いないよ。彰人だけ。どうかした?」


「…ううん、なんでもない」



なんとも言えない違和感が、胸を締めつける。



「うわ、やべ。スマホどっか置いてきちゃった。あ、さっき行ったトイレかな。悪い、陽菜。ちょっとここで待ってて」


「うん」



奏多が走り去ってから、何気なく辺りを見渡していると、ふと図書室の存在を思い出した。


高二の頃に委員会でよく通っていた図書室に、もう一度行きたい欲が出てくる。


じっとしていられず、一応奏多に連絡を入れて図書室に向かう。



懐かしい扉を勢いよく開けると、ぶわっと風が顔面に直撃してきて、早起きして巻いた髪もぐしゃぐしゃになった。


開け放たれていた窓を閉め、静けさに包まれている図書室を歩き回る。



–––バサッ。



何かが落ちた音がして驚き、びくりと肩が跳ねる。


恐る恐る覗くと、一冊の本が落ちていた。


本の落ちた音だったとわかりホッと安堵する。
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