たとえこの世界から君が消えても
「いつまで経ってもガキな俺に、本当はうんざりしてんだろ!うざいんだよ、優しくされても!」



傷ついたように顔を歪ませる母さんに、ハッと我に返るがもう遅い。


いてもたってもいられなくなり、くるりと踵を返し、入口に向かう。



…どうしていつも俺はこうなんだ。


俺がもっと素直に言葉を伝えられる人だったら、母さんをあんな顔にさせることもないのに…。



「…っ!蓮!」



母さんの叫び声が聞こえたかと思うと、思いっきり突き飛ばされた。



–––ガシャアアア!



驚いて振り返ると、倒れた本棚が母さんの上に覆いかぶさっていた。


俺を庇ってくれたんだとすぐにわかり、血の気が引いた。



「母さん!」



急いで本棚をどかそうとするが、ぎっしりと本の詰まった棚は重くてぴくりともしない。



「くっそ、なんだよ!なんで!」



普段こんなに力を入れないからか、指先の皮が剥がれ血が滲んでくるが、構わず続ける。
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