たとえこの世界から君が消えても
「じゃあその小説おすすめだよ。私の大好きな小説なんだけど、活字が苦手な人でも読みやすいし何よりも泣ける!」



ー『この小説おすすめ!私の一番大好きな小説で、蓮みたいな活字が苦手な人でも読みやすいし何よりも泣ける!』



「ふっ、あはは!」



いつかの母さんと同じことを言うもんだから、つい笑ってしまう。


やっぱりこの子は間違いなく母さんだ。


高二の姿とはいえども、母さんとこうして話をできているのが夢のようだ。



「蓮くんはお母さんが大好きなんだね」


「…そう、ですね。…すごく大事で大好きです」



…高二の母さん、陽菜先輩になら、素直に言えるのにな。



「あ、蓮くんと話してたらもうこんな時間。教室戻んなきゃ。蓮くんも教室戻る?」



…なんとなく、今図書室を出てはいけない気がした。



「あー俺、もう少しここにいます」


「そっか。じゃあまたね」



笑顔で手を振る陽菜先輩に、手を振り返す。
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