たとえこの世界から君が消えても
しばらく陽菜先輩の出ていった入口をボーと眺めてから、ふらりと立ち上がる。



廊下に出てから、後ろを振り向くとまさかの光景に目を疑った。


先ほどまでは倒れていなかった本棚が、あの日の、母さんが下敷きになった日のまま倒れていた。


いつ倒れたんだ?音はしなかった。



恐る恐る中に入るも、目の前の光景は変わらない。


ハッとしてカレンダーを探すが、さっきまで壁にかかっていたはずのカレンダーは消えていた。


五時間目の開始を告げるチャイムが鳴り響いたが、構わず本棚の横を通り抜け、図書室をウロウロする。



「…あ!」



隅っこにぽつんとかけられているカレンダーを見つけ、思わず声が出た。


カレンダーの西暦は、俺が生きている時代のものだった。



「夢…だったのか?」



高校時代の母さんは、俺が見せた幻だったのか?



少しの希望を抱きながら、放課後も図書室に行ってみるものの、もう一度陽菜先輩に会えることはなかった。


昼休みの出来事は、やはり俺が作った妄想だったのかもしれない…。



「どうして…」
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