たとえこの世界から君が消えても
次の日、なんとなく行った図書室は、倒れていた本棚が元に戻っていて、二十二年前のカレンダーが壁にかけられていた。



「どういうことなんだ…」



やっぱり昨日の出来事は夢ではなかったのか?


もう一度陽菜先輩に会えるのか?


四人がけテーブルの一つに座り、母さんの大好きな小説を開く。



「ここは、一体どこなんだ…?」



小説に語りかけるかのように呟くが、もちろん返事が返ってくることはない。


小説をボーと眺めながら悶々と考えていると、図書室の扉が勢いよく開いた。



驚いて視線を向けると、息の上がっている陽菜先輩が俺を凝視していた。



「ああ、よかった、いた…」


「え?」


「昨日の放課後いなかったから、もしかしたらもう来ないのかなって思って。また蓮くんと話したかったからそれは嫌だなって…」



…昨日の放課後は、陽が落ちるまでずっと図書室で過ごしていた。


陽菜先輩ともう一度会えないかと、希望を抱いて。
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