たとえこの世界から君が消えても
「陽菜ー。これからクラスの暇なメンバーでカラオケ行こって話になってるんだけど、陽菜も来るでしょ?」


「ごめん!今日放課後も図書委員の仕事あって…」


「そっか、それはしょうがないねー。委員会頑張ってね」



にこりと微笑みながら手を振ってくれた加奈に再び謝ってから図書室へ急ぐ。



今日は本当に図書委員の仕事が放課後にある。


それに…また蓮くんに会えたらいいな、と思っている自分がいる。



図書室の扉を勢いよく開けるが、中にはまだ誰もいない。


カウンターに座り、たまに本の貸し出しにやってくる生徒の対応をしたり、読みかけの小説を読んだりすること一時間。


なかなか蓮くんは現れない。



もう、帰っちゃったのかな…。


また放課後、と約束をしたわけじゃないし、帰っても当然だ。


…そう頭で理解するが、やっぱり少し期待してしまう。


だが、その日蓮くんが図書室に来ることはなかった。
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