月と黒猫
「ねぇ、君、名前は?」
カヨちゃんがニャーに尋ねました。
「ボクは……。」
ニャーは悩みました。
自分のことを教えるべきかどうか。
もしカヨちゃんに本当のことを言ったら、カヨちゃんは気味が悪いと思うかもしれない。
ニャーは本当のことを隠すことにしました。
「ボク、名前がないんだ。」
「忘れちゃったの?」
「違うよ。ボクには名前がないんだ。」
「どうして君には名前がないの?」
「誰もつけてくれないんだ。」
カヨちゃんはうつ向いてしまいました。
「ど、どうしたの?」
ニャーは慌ててカヨちゃんに尋ねました。
「…名前がないなんてかわいそう。」
カヨちゃんはまた泣いてしまいました。