ぼくらは薔薇を愛でる
「ふうん……みんな下がれ」
「なりません、ジャン様!」
執事がクラレットとジャンの間に入り、クラレットを背に庇った。
「っるさいなぁ! 婚約者と触れ合いに来たのに野暮なことしないでよ、家来風情がさあ!」
執事を退かそうとするも動かない様子に苛立ったジャンは思い切り右拳を執事に向けた。
「邪魔だっつってんだろ!」
小さな悲鳴があがる。執事は投げ飛ばされ、大きな音を立ててそばにあったテーブルに体を打ちつけた。
「きゃあ!! わ、私、旦那様を呼んできます!」
目の前で執事が殴られ、恐ろしさで後ずさるしかできないクラレットは、そのうまく動かない足がもつれて床に尻餅をついてしまった。それを良いことにすかさずクラレットの身体を押し倒してしまった。ニヤけた顔でクラレットのストールに手を掛ける。
「おやめくださいっ」
パープルがジャンの腕を掴めば、開いた片方の手でパープルを突き飛ばした。
「しつこい!! 終わるまで黙ってろ!!」
「いや! パープル!」
突き飛ばされたパープルは思い切り壁にぶつかって、そのままズルズルと床に落ちる。
動かない執事とパープルの姿を見ながら、必死に胸の前でストールを握っていたが力ずくで奪われ、クラレットは試着のために拡げられた布の上で、両手を頭の上で固定され身動きが取れなくなってしまった。
「良いカラダじゃん。結構デカいんだなあ、今まで来なかったから知らなかったけど」
指先でクラレットの乳房に触れてきた。その気持ちが悪い感触が全身に拡がった。とにかく不快感しかなかった。触れられたそこはまるで毛虫が這っているかのようで、たまらず頭の中で助けを呼んだ。
――レグ……レグ!!
溢れる涙をニヤついたまま見下ろして、クラレットの着ている部屋着に手をかけた時だ。
「なっ、なんだ?! これ」
覆いかぶさった状態で、眉根を寄せて見下ろしていた。