ぼくらは薔薇を愛でる
第五章
あれからの日々
領地カーマインへ来て十日余り経った。自室に篭っている。外に出る気も、パープル以外の者と話す気力も無く、ただ時間が過ぎていく中に静かに身を置いていた。
あの日、父親と話を終えてすぐ荷造りをし昼には王都を発った。夕方にはカーマインに到着したが、すぐに部屋に下がらせてもらった。それからずっと部屋で過ごしている。
朝はこうして目が覚めるが、外へ出ていく気になれない。食事はパープルが声をかけてくれるものの、食欲は一向に湧いてこず、お茶と軽食のみをもらっている。その際、パープルが話を振ってくれるが、彼女の話に乗る気力も湧いてこない。
ソファに腰を落としてクッションを抱えていればすぐさまあの時の光景が脳裏に蘇る。蛇のように絡みつく目つき、肌に触れた乱暴は手、近づく顔、どれもが気色悪く、吐き気こそ催さないものの、それに近い不快感が襲ってくる。
押し倒された事、女として拒絶された言葉は何度も耳の奥に繰り返し響いた。そうならないためには身体を動かしていたほうがいいのは解っているが、心が付いていかなかった。
領地の邸にいる使用人達は少数で、幼い頃からメンツは変わらない。クラレットの痣についても知っていて今更厭わないのはわかっているが、元婚約者のように思っているのではないかと思うだけで部屋から出られなかった。彼女達を信頼しているのに、そんな風な思いを抱えてしまう自分も嫌だった。
あの日、父親と話を終えてすぐ荷造りをし昼には王都を発った。夕方にはカーマインに到着したが、すぐに部屋に下がらせてもらった。それからずっと部屋で過ごしている。
朝はこうして目が覚めるが、外へ出ていく気になれない。食事はパープルが声をかけてくれるものの、食欲は一向に湧いてこず、お茶と軽食のみをもらっている。その際、パープルが話を振ってくれるが、彼女の話に乗る気力も湧いてこない。
ソファに腰を落としてクッションを抱えていればすぐさまあの時の光景が脳裏に蘇る。蛇のように絡みつく目つき、肌に触れた乱暴は手、近づく顔、どれもが気色悪く、吐き気こそ催さないものの、それに近い不快感が襲ってくる。
押し倒された事、女として拒絶された言葉は何度も耳の奥に繰り返し響いた。そうならないためには身体を動かしていたほうがいいのは解っているが、心が付いていかなかった。
領地の邸にいる使用人達は少数で、幼い頃からメンツは変わらない。クラレットの痣についても知っていて今更厭わないのはわかっているが、元婚約者のように思っているのではないかと思うだけで部屋から出られなかった。彼女達を信頼しているのに、そんな風な思いを抱えてしまう自分も嫌だった。