捕まえたの、俺だから。
チョコ一つで、しかもただの部活の先輩から。
それなのに世界一の幸せ者みたいな笑顔を咲かせるんだから、直くんってば本当に可愛い。
チョコづくりは得意だし、きっと期待外れだとは思われないはず。
チョコを食べた後はどんな風に笑ってくれるかな?
もっともっと、私に満開の笑顔を向けてくれるといいな。
……今後、二度と見られないだろうから。
◇ ◇ ◇
「先輩、これ……」
部活が終わり、本日メインイベントのチョコ渡しの時間。
外は寒いからと風よけのために体育倉庫の中で行われたそれに、もちろんムードも何もない。
ごそごそと大きめのトートバッグを漁り、可愛くラッピングさせた袋を直くんに渡したのだけど。
「え、嫌いだった?」
「いや、全然!むしろ大好き!で、でもね……」
珍しくごにょごにょと言い淀む直くん。
甘いスイーツを片手に苦い顔をしているのがちょっと変で微妙に笑いのツボを刺激してくる。
と、そこに。
「倉八先輩あざーっす!」
「ガトーショコラを大量生産。しかも美味いし、さすがっすね!」
「これで今年もゼロを回避できたー!倉八先輩まじ女神……」