捕まえたの、俺だから。



キラキラした目を向けながら、わらわらと寄ってくる後輩たち。


直くんよりも先に渡してて、もう袋を空にしている子が大半だ。


部活後の疲れた身体に甘味が染みているのか、みんな口元をほころばせてる。


「全員にメッセージ付き……愛を感じる!本命チョコっぽい!!」

「「それはない」」

「なっ、倉八先輩も直も、そんなマジな顔して言わなくていいじゃん!冗談なのに!!」


うわーん!と友達の胸に飛び込む後輩くん。


どっと笑いが起きるこの部は今日も平和だなぁ。


「でも、ほんとにびっしり書いてくれてて嬉しいよな。全員分って大変だろうし」

「それな!俺らのこと見守ってくれてたんだなって感じがする!」


「……びっしり?」


怪訝そうに部活仲間を見る直くんに、ぎくりと心臓がびくつく。


喜ぶ後輩たちを目に焼き付けるふりして、こちらへと視線をずらした直くんから逃げた。


メッセージが書かれたカードを大事そうに持つ後輩くんの姿は純粋に可愛いけど、一つ教えてあげたい。



『本命相手にはなにも書けなくなっちゃうものなんだよ』って。



他のみんなにはカードぴったりに文を書けたのに、直くんだけは余白ができちゃった。



< 11 / 24 >

この作品をシェア

pagetop