捕まえたの、俺だから。



言いたいことがありすぎて。


言えないことがありすぎて。


一生懸命抑えてたら、最低限の形式的な文しか書けなかったんだ。


ほんとは誰よりも言葉を贈りたかったのに。


「倉八先輩?寒いっすか?」

「あ、ううん。大丈夫だよ。それより、お口にあったようでなにより」


気持ちが沈みかけるのを紛らわすように、にこっと微笑む。


たくさん喜んでくれるのは普通に嬉しいから、作り笑顔にはならなかった。


すると、後輩たちが露骨にざわつき始めて。


「え、今のやばっ……」

「倉八先輩が彼女だったら絶対幸せなんだろーなー……」

「来年ももらいたいし、告っちゃおうかなー」


と、調子のいいことを言う子たちが現れた。


チョコを貰っただけで彼女にしたいだなんて、単純にも程があるよね……。


まぁ、さすがにこれも冗談だろうし、私は心が広い先輩だから聞かなかったことにしてあげるんだけど。


にこにことした表情を崩さなかった私。


それなのに、近くにいた1人の後輩がなぜかこっちを見て顔を引き攣らせた。



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