捕まえたの、俺だから。
捕まえたの、俺だから。
あれから早2週間。卒業前の最後の登校日。
部活には顔を出すものの後輩ちゃんのガードやら睨みの鋭さが増し増しで、直くんには近づけずに心が折れそうになっている私です。
しかも……。
「倉八先輩どこかな~」
「走るの遅そうだから楽勝だと思ってたのに!」
「一番最後まで残るとか……まさか俺たち、負ける説ある?」
後輩たちに捕まらないようにかくれんぼ中で、精神的に疲弊している私です。
いや、ほんとは“ケイドロ”をしてるはずなんだけど。
『今日は3年生と1,2年生で勝負してもらう』
『対抗戦ってことですか?』
『そんな感じだ。やるのはケイドロ』
『先生、ケイドロ派なんだ。俺はドロケイ派だな』
『俺は先生と仲間だ~』
『どっちでもいいだろ』
『……話を続けるぞ。1,2年生が警察、3年生が泥棒。3年生は意地とプライドで後輩たちから逃げろ。範囲は学校の敷地の中かつ校舎外であればどこでもいい。制限時間は20分な』
『20分って長いな』
『俺、プライドとかないしほどほどやって捕まろうかな~』
『ちなみに買った方には全員に焼き肉食べ放題を奢ってやる』
『よし、頑張ろう!』
『あぁそうそう。最後だしせっかくだからマネージャーも強制参加でよろしく。鬼は今から1分待機だ。よーい始め!』
『え?』
『倉八!お前もちゃんと逃げろよ!俺たちの焼き肉がかかってんだからな!!』
『わ、わかった!』
……と、怒涛の勢いで展開される話の中で、私に拒否権なんて存在しなかった。