捕まえたの、俺だから。
特別がよかった。
2月の2週目。バレンタインデー数日前の登校日。
当日に登校することができない私たち3年生は今日、教室や廊下に甘い匂いを漂わせる。
はたまた想い人が3年生の場合、恋する乙女たちにとっては最後のチャンスでもあって
「ずっと前から好きでした!私と付き合ってください!」
「俺で良ければ喜んで」
というやり取りが密やかにそこかしこで行われるのだ。
今がまさにそうで。
「……見ちゃった」
「見ちゃったね」
私と直くん、至近距離。ひそひそ声で交わされる会話。
カップル誕生の瞬間を目撃した私たちだった。
心臓がとくとくと小刻みに音を鳴らしているのは、2人から漏れ出る甘い雰囲気に飲み込まれているせい。
直くんとの距離が近すぎるせいではない。断じて。決して。たぶん。
「出て行けそうにないね」
「……そうだね」
「まぁ別に、俺はこのままでもいいんだけど」
「よくないよ。早く練習に戻らないと」