捕まえたの、俺だから。
なんでこうなったかと言えば単純な話で。
体力づくりのために外周をしたいと言い出した直くんのタイムを計るために2人で裏門へと向かっていた。
当然、後輩ちゃんの憎しみのこもった視線が背中に刺さったけれど、直くんに手を引かれたら私がそれを振り払えるわけもなくて。
この前のムッとした感情をいまだに滲ませるような直くんの雰囲気にびくびくとしながらも、手から伝わる温もりに嬉しさを噛みしめていたんだ。
そんな中、私たちと先客2人、お互いがお互いの姿を捉える前に緊張で上ずった声が辺りに響き渡り。
「……っ、嬉しいです!」
「俺もだよ。勇気を出してくれてありがとう」
……甘酸っぱい結末に落ち着いたのだった。
想いが通じ合って微笑み合う2人はわかりやすく幸せオーラを放っていて。
「私も先輩と同じ大学を目指して頑張ります!」
「おう、勉強頑張れ。たまには俺と息抜きもしような」
「はいっ!先輩との息抜きがあれば頑張れちゃいます!」
普通に羨ましい。私も甘々な空気に浸りたい。