捕まえたの、俺だから。
いや、直くんとそういう空気になんておこがましすぎて、告白なんかできるわけもないのだけども。
想いを伝えるだけの自己満足に直くんを付き合わせるとしたら、最後の日にようやくってところだろうか……。
あと1か月もしないうちにやってくる卒業式の日。
だから、今日は伝えられない。
バレンタインの便乗なんて、できるわけがない。
せめて残りの時間を、笑って過ごしたい。
この前のことでこっちが勝手にダメージを受けて、今はちょっとだけ気まずいけれど。
「まどか先輩。2人ともいなくなったよ」
「う、うん。ありがと」
自然と俯いてしまっていた私に、直くんが耳元で教えてくれる。
軽くかかる息に耳も心もくすぐられて、私は耳を抑えながら不自然なほどに直くんから距離を取った。
恋愛偏差値ゼロの私の内側なんて知らない直くん。
大きな瞳に私を映して小首を傾げ、それからまたあっさりと私との距離を詰める。
寒いからなのか、なんなのか。
あぁ、もうほんとに。この子は無自覚が過ぎる。